課題

スピードの必要性

高性能計算(HPC)システムのユーザの多くは常に目的意識を持ち、その目標を実現するという行動に駆り立てられています。精度の向上や解析内容の詳細化を通じて新たな洞察を得、何らかの成果を最初に達成しようとしている人もいます。またよりよい判断、生産性の向上、あるいは人生を変えたり命を救うことのできる事象を予測するため十分に早く結果を出すよう心がけている人もいます。

HPCは、一連の質問や問題に対する解答が別の課題を生み出すという性質のものです。一般的に次の段階の課題は、それ以前の課題よりも複雑なものとなります。その先に進むためにより正確でパワフルなツールが必要となり、限りない計算サイクル数の増加、より高いレベルの性能、精度が常に求められます。

主要プロセッサメーカーの最近の技術的進歩により、優れた性能と同時に市場規模の拡大による低コスト化が達成され、より多くの個人や組織がHPC機能を利用できるようになりました。しかし残念なことに、新システムが手頃な価格で利用可能になったことで、また新たな課題が発生しています。

消費電力の限界

現在、HPCシステム設計者の夢の1つは、LINPACKで1PFLOPを達成可能な世界初のシステムを構築することです(複雑な連立一次方程式のシステムを解く毎秒10の15乗回の浮動小数点演算)。このレベルの性能を達成するには、1台あたり数TFLOPSのスピードを持ち拡張性に優れた数百ものノードやラックが必要です。

1キロワット時(kWh)あたりの電気代は、原子力発電の余剰電力や十分な水力発電が近くで得られる米エネルギー省パシフィック・ノースウェスト国立研究所(PNNL)の場合6円、マウイ高性能計算センター(MHPCC)の場合28円とかなり幅があります。ハードウェアの価格はムーアの法則に従って低下しますが、さらに密度化するビットに対応するために必要なエネルギーの費用はインフレーションや原油価格の上昇により上がり続けています。

300ワットを消費する1台の2ソケットサーバを1年間連続動作させたら電気代はいくらになるでしょうか?1キロワット時(kWh)が15円の場合は年間で45,750円となり、これは1ワットあたりに換算すると年間122円を少し超える金額に相当します。.

上記のサーバでLINPACKベンチマークによる50GFLOPSを達成できると仮定してみましょう。連続してPFLOPSレベルの性能を発揮させるには、完全な拡張性を前提として、このようなシステムが20,000台も必要になります。このような「夢のマシン」にかかる年間の電気代は約7.3億 円にも上るでしょう。

このような特別に高い目標を達成できる精度、性能、拡張性、消費電力の各特性を満足するシステムの開発にはまだ誰も成功していません。現実的ながら控えめな見積りによれば、このシステムを常時運転させるエネルギー費の予算は約12億2千万円となり、同時に容量が10メガワットの電力が必要です。

どの施設でも計算機室への電力供給能力には最大量があり、これを数メガワットさらに増加するとすれば大規模な技術プロジェクトが必要になります。

床面積の限界

今日、スーパーコンピュータ化によって、建物がラックで占有された状態になることは一般に認知されています。問題は、何本のラックが収容可能かということです。

単にコストだけの問題ではないという点では床面積の限界も電力消費の限界と同様です。いくらお金をかけても十分な床面積が得られない可能性があります。仮に必要な床面積が得られたとしても、数千台のシステムの重量を支えることができない可能性もあります。金融モデリング用にHPCを利用するマンハッタンやロンドンの金融センターの場合、それに適した施設は単に高価なだけでなく、実際に必要とされる場所に設置できることはかぎられません。

結論

新しい浮動小数点処理アクセラレータ技術は、プログラミングのしやすさと同様に電力効率、総電力消費量、いわゆる計算処理濃度などを考慮する必要があります。つまりデータセンターを拡張しても、総計算処理能力の増加という課題への解決策にはもはやならないのです。したがって、理想的な浮動小数点処理アクセラレータがデータセンターのスペース面、より正確にはボリューム面に対して増加させる負荷はそれほど大きくありません。